ひっくり返してまたひっくり返す
重症COVID-19の治療法のひとつとして
腹臥位療法がある
これは
昨年コロナが流行り始めた3月頃には
既に私の病院では実践されていた
腹臥位とは、
あお向けで寝るのが仰臥位で
その逆
うつ伏せで寝るのが腹臥位だ
仰向けのとき
我々の肺は
肺周囲の臓器の下にある
=背中側にあるため
重力により下に押しつぶされる
するとCOVIDにより肺機能が劣っている人は
肺が膨らまずにガス交換が
うまくできなかったり
背中側の肺胞に痰がたまったりして
(無気肺、アテレクと言ったりする)
酸素化が悪化するわけだ
一方で腹臥位(うつ伏せ)
をすることで背面解放し
今度は逆向きの重力により
肺をお腹側に膨らませることができる
つまり換気効率があがり
酸素化が改善しやすいというわけだ
(とても大雑把な説明なので詳しくは
調べてみてください。)
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しかしこの腹臥位
一般の我々がするうつぶせとはわけ違う
人工呼吸器が口についていたり、
栄養のチューブが鼻から入っていたり、
点滴のルートが何本も腕や足に入っていたり、
人工心肺や透析の機器がついていたり、
そのような患者さんがうつ伏せになるわけである
そしてタチの悪いのが
重症COVID-19の患者さんは
ほぼほぼ
体重の重い人が多い
ということである
もちろん
鎮静をかけているため
意識はほぼない
つまり自分自身で動くことはできないため
医療スタッフでひっくり返すことになる
医師や看護師など
医療スタッフ最低5人以上で
腹臥位をする必要がある
これは
体重が重いから
という理由だけではなく
安全を確保する必要があるから
という理由でもある
前述した通り
患者さんの身体には
多くの挿入物が留置されているため
引っ張られて抜けてしまったり
体の下敷きになってしまっては
事故に繋がる
また
腹臥位のポジショニングがかなり重要で
適切なポジショニングをするためにも
人数が必要なのである
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さてこの腹臥位
我々看護師の腕のみせどころである
適切なポジショニングをする必要がある
と言った理由にも繋がる
腹臥位は
とにかく褥瘡(床ずれ)
のできるリスクが非常に高い!
うつ伏せでずっと10時間以上も過ごすため
(私の病院では16-17時間やっている)
仰臥位の時よりも
顔面や胸部など繊細な部分に
集中的に圧と摩擦が生じやすい
にもかかわらず
それらの観察がなかなかできないため
仰臥位の時に比べて褥瘡リスクが上がるのだ
特に多いのが
顎・前胸部である
我々のうつ伏せを想像すると
顎に褥瘡ができるのは
あまり想像しがたいかもしれないが
実は
ポジショニングを工夫しない限り
顎にかなりの圧がかかる
(前胸部に圧がかかるのは
なんとなくわかるだろう)
そのため、枕の工夫をしたり、
上半身のポジショニングを工夫したり、
顔の向きを工夫したり、
皮膚保護剤を貼る工夫をしたり、
観察と除圧の頻度をあげる工夫をしたり、、、
といったように、
褥瘡ができないように
最善の工夫と注意をしていく必要がある
ポジショニング、除圧、皮膚の観察、皮膚保護の工夫、、
これは看護師の腕のみせどころだ
だいたい
日勤の終わり夕方くらいから
腹臥位を開始すると
夜勤帯は朝までずっと
腹臥位を担当することになる
最低でも1時間以内に1回は
除圧やポジショニングの確認や皮膚の観察をする
そのため夜勤帯では
最低16-17回以上は
患者さんの顔や身体を持ち上げるという
重労働をするのだ
私は
特に顔が潰れて褥瘡ができることが
心配で心配で
いてもたってもいられなくなるため
1時間といわず
30分間隔で実施することもあるし
点滴の更新や
バイタルの測定などで
部屋に入るタイミングがあれば
その時は毎回除圧を実施するようにしている
そのため、その数20回以上
となることもある
朝が来る頃には
ヘトヘトである
これに加えて
排泄があればそれらの処理をしたり
酸素化の悪化や循環動態の悪化があれば
点滴の速度変更や追加をしたり
ドクターコールをして呼吸器の設定を変えたり
などなどあらゆる対応をする
ひと時も気の休まる時はない
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コケコッコー
朝が来て
日勤さんに申し送りをするタイミングの前後で
腹臥位を終了し
また医師看護師5名以上で
仰臥位(あおむけ)に戻す
皮膚トラブル有無の観察をし
無事に何も皮膚トラブルがなかった
という時の
安堵感たるや
たるやたるや、、、
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こんな感じで
日々COVID-19重症患者さんに
腹臥位を実施しているわけだが
全員が腹臥位療法の対象となるわけではないし
腹臥位を実施した全員が
その効果を十分に得られるわけではない
とはいえ
腹臥位の効果が抜群に得られて改善した
というケースは多い
腹臥位の努力が報われた時は
集中治療科のドクターと
腹臥位を頑張って来たナース
共に
がんばった、、、
よかった、、、、
という気持ちに
なっているはずだ。
そして
腹臥位で最も問題な
褥瘡に関しても
以前は不慣れな腹臥位で
褥瘡が多発することもあったし
ポジショニングが適切ではなくて
集中治療科のドクターから
厳しい声がかかることもあったけど
最近は
循環動態が悪く皮膚も脆弱化している患者さんが多い中
腹臥位の褥瘡発生が少なく、素晴らしいことだと
お褒めの言葉をいただけるようになった
医師と看護師の信頼関係の向上にも
繋がることだ
連日
重症COVID-19の担当
腹臥位の担当が続き
気の休まることはないけれど
ここは
看護の腕のみせどころ
だと思って
乗り越えてく💪
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